受精卵に適した培養環境について|名古屋市中区の不妊治療・体外受精専門クリニック|名古屋上前津ARTクリニック|

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受精卵に適した培養環境について

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受精卵に適した培養環境について

卵巣から排卵した卵子は卵管采から卵管に取り込まれ、卵管で精子と出会って受精します。受精卵は発育をしながら卵管から子宮へと移動し、子宮内膜に着床します。

体外受精では体外に取り出した卵子を培養液の中で精子と受精させ、インキュベーターの中で受精卵を培養します。しかし、体内と体外の環境は大きく異なるため、体外でそのまま受精操作を行ったり、受精卵を培養すると、卵子や受精卵に大きなストレスを与えます。このストレスは受精や発育にマイナスの影響を与える可能性があるため、受精操作を行う環境や、受精卵を培養するインキュベーターは可能な限り体内の環境に近づける必要があります。ポイントは、温度、pH、酸素濃度です。

温度

卵子を取り扱うクリーンベンチの上や顕微鏡のステージ、卵子や受精卵を培養するインキュベーターの温度は、37℃に保たれています。

特に卵子や受精卵の正常な染色体分離のための機構は、温度変化により大きな影響を受けることが知られており、37℃を大きく下回る環境では発生率が低下することが報告されています。そのため、人の深部体温(体の内部の温度)と同じ37℃の一定の環境下で培養することが大切です。

pH

人の体内ではpHは厳密に調整されており、血液中のpHは通常7.40±0.05です。

血液の中にはpHの急激な変動を弱める(緩衝作用をもつ)重炭酸イオンが含まれており、呼吸による二酸化炭素濃度の調整や、代謝による重炭酸イオン濃度の調整により、pHが一定に維持されています。

生体から細胞を体外に取り出したとき、pHが7.4から大きく外れると、どの細胞も生存が難しいことが知られています。体外での培養はpHを7.4に保つことがとても大切です。

卵子や受精卵をインキュベーターで培養するための培養液の中には、体内と同じ重炭酸イオンが含まれています。培養液中の重炭酸イオンの濃度と大気圧から計算すると、二酸化炭素濃度が6%のときにpHが7.4付近になるため、インキュベーターの二酸化炭素濃度は6%に保たれています。また、卵子や受精卵の培養を始める4時間以上前から培養液をインキュベーターの中に入れて、二酸化炭素濃度が6%、pHが7.4になるように準備します。

酸素濃度

大気中の酸素濃度は約21%ですが、インキュベーターの酸素濃度は5%に保たれています。

人の卵管や子宮内部の酸素濃度は2~8%と低酸素であることが知られており、大気中で培養した受精卵は発生が低下することが報告されています。そのため、人の卵管や子宮と同じ低酸素下で培養することが大切です。

 

 このように、卵子や受精卵を扱う際は体内と同じ環境を作り、ストレスが最小限になるように注意しています。また、培養士は受精や凍結融解のために、卵子や受精卵を体外で操作する必要があります。間違いのない丁寧な操作はもちろん必須ですが、この時間を長時間化させないこともストレス軽減のために大切です。お預かりした配偶子に対して、細心の注意を払って培養させていただいております。
気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

・生殖補助医療(ART)胚培養の理論と実際 日本卵子学会
・The effects of chemical and physical factors on mammalian embryo culture and their importance for the practice of assisted human reproduction.
Human Reproduction Update. 2016 Jan-Feb;22(1):2-22

 

2026/6/18

名古屋上前津ARTクリニック 胚培養士 M.K.

本コラムは一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診療方針を示すものではありません。

治療に関する最終的な判断は、主治医との十分な相談のうえで行ってください。

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