先進医療・自費診療
先進医療・自費診療
厚生労働大臣が定める先進的な医療技術等で、国民の選択肢を広げ利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認め、将来的に保険導入に向けた評価を行う制度です。先進医療は、医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されています。
保険診療と自費診療を組み合わせる混合診療は原則禁止となり、すべての診療が全額自己負担となります。「先進医療」については保険診療と併用し自費診療が可能となり、先進医療部分が全額自己負担になります。

当院で実施する先進医療
※令和8年5月1日時点
申請中の先進医療もありますので、来院時にご相談ください。
タイムラプスインキュベーターとは、インキュベーター(培養器)に顕微鏡とカメラが搭載されており、胚を一定間隔で自動撮影し、培養器から取り出すことなく観察できます。
タイムラプスを使うメリットは3つあります
当院では基本的に全ての症例にタイムラプスを使用していきます。
名古屋上前津ARTクリニックでは「Harvester(ハーベスター)」という専用のキットを使って精子選別を行います。
このキットには小さな穴の開いた特殊なフィルターがついており、運動性が高い精子のみがこの穴を通りぬけて、上方に泳ぐことができます。これによって、動いていない精子、頭部の大きな奇形精子、不純物、白血球などの細胞を分離することができます。
受精後の胚発生には精子のDNAの断片化の関与が報告されています。密度勾配遠心法では、高速での遠心分離で精子を選別するため精子DNAに物理的損傷を与えると言われています。
Harvesterで選別された精子は、密度勾配遠心法と比較し、DNA断片化率は低くなり、胚盤胞到達率・妊娠率が向上する可能性があります。
※高度乏精子症、精液量が著しく少ない方、運動精子が極端に少ない方、TESEや凍結精子を使用する方は実施することができません。

PICSI(Physiological Intracytoplasmic Sperm Injection:生理学的精子選択顕微授精)は、ヒアルロン酸(HA)への結合能を利用して、成熟度の高い精子を選別し、顕微授精(ICSI)を行う先進的な生殖医療技術です。
自然妊娠の過程では、成熟した精子のみが卵子周囲のヒアルロン酸に結合する性質を持っています。PICSIはこの生理的な選択機構を体外で再現することで、より質の高い精子を選び出すことを目的としています。

精子の中には、外見上は正常でもDNAに損傷を持つものが存在することがあります。 PICSIでは以下の性質を利用します。
この特性により、機能的に成熟した精子のみを選択することが可能になります。
| 項目 | 従来ICSI | PICSI |
|---|---|---|
| 精子選択方法 | 形態・運動性(見た目) | ヒアルロン酸結合(機能) |
| 評価 基準 |
経験的判断 | 生理学的選別 |
| 精子 の質 |
外観中心 | 成熟度・DNA健全性 |
PICSIは「見た目」だけでなく「機能」に基づいた選択を行う点が大きな特徴です。
以下のような患者様に適応が検討されます。
1
採卵および精子採取
2
ヒアルロン酸を用いた選別精子を用いて顕微授精(PICSI)
3
胚培養
4
胚移植
当院では、患者様一人ひとりの状態に応じて、最適な精子選別法を選択しています。PICSIは、従来の顕微授精では結果が得られにくい場合において、有効な選択肢の一つです。
IMSIなど他の先進的手法と組み合わせながら、より高い妊娠率を目指した個別化医療を提供しています。
PICSIは、精子の「機能的成熟度」に基づいて選別を行う、より生理的で高度な精子選択技術です。
従来の方法では評価が難しかった精子の質にアプローチできる点が大きな特徴です。
子宮内膜が胚を受け入れる期間を「着床の窓(WOI:window of implantation)」と言います。胚移植の時期が着床の窓が開く時期と大きくずれていると、着床が難しくなる可能性があります。
ERpeakは凍結融解胚移植のホルモン補充周期と同様の方法で子宮内膜を育て、決められた日に子宮内膜を採取します。採取された内膜は遺伝子解析を行い、着床の窓がずれていないか確認します。ずれている場合には、着床の窓に合わせて胚移植の時期を調整し、着床の可能性を高める効果を期待します。

反復着床不全の方が主な対象です。
着床の窓に関連が認められている48種類の遺伝子発現を解析し、組織を採取した時期が胚の受容期であったかどうかを調べます。判定結果は下記のように示されます。

1
受容期前
子宮内膜は胚着床の準備ができていません。胚移植は検査よりも1日後に行います。
2
受容期
子宮内膜は胚の受容に最適な時期です。胚移植は検査と同じ時期に行います。
3
受容期後
子宮内膜は胚の着床に最適な時期を過ぎています。胚移植は検査時期よりも1日前に実施します。
4
非受容期(着床の窓のずれ)
子宮内膜は胚の着床に適していない状態です。2回目の検査が推奨されます。
子宮内には子宮内フローラと呼ばれ、乳酸菌の一種であるラクトバチルス属菌などの多種多様な細菌が存在しています。
子宮は胚が着床し胎児が成長する大切な場所です。そのため、良好な子宮環境を維持することは、妊娠・出産に大きく関わります。
子宮内フローラ検査は、子宮内の善玉菌であるラクトバチルス属菌の割合と、慢性子宮内膜炎などの炎症に関与する病原菌の有無を調べる遺伝子検査です。
子宮内で慢性子宮内膜炎などの炎症が起こっている場合、抗菌剤投与などの治療をしない限りなかなか改善されず、妊娠に至らず不妊治療の長期化につながります。
またラクトバチルスの割合が多い状態が、妊娠に対して良い子宮環境とされているため、ラクトバチルスの割合が低い場合には膣剤を投与します。
反復着床不全の方が主な対象です。

より精密に精子を選び、受精の質向上を目指す技術です。
IMSIは、高倍率の顕微鏡を用いて精子を詳細に観察し、形態の良好な精子を選んで卵子に注入する方法です。
通常の顕微授精よりも微細な構造まで確認できる点が特徴です。
IMSI(Intracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injection)は、高倍率で精子を観察し、頭部の微細な構造まで評価しながら精子を選別する顕微授精法です。
従来の顕微授精(ICSI)では確認が難しかった細かな形の違いも把握できるため、より精密な精子選択が可能になります。
見える情報が変わると、選べる精子も変わります。

| 左:通常の顕微授精(約400倍) | 右:IMSI(約600-1200倍) |
|---|---|
| 精子の全体的な形は確認できますが、頭部の細かな構造までは詳細に観察することが難しい状態です。 | 精子頭部の内部構造(空胞など)まで確認でき、より詳細な評価が可能になります。 |

※効果には個人差があります
当院では、高倍率顕微鏡を用い、経験豊富な培養士が精子の状態を丁寧に観察しながら選別を行っています。
患者さま一人ひとりの状況に応じて、IMSIの適応についてわかりやすくご説明し、最適な治療方法をご提案いたします。
IMSIはすべての方に有効とは限らず、治療効果には個人差があります。
「精子の質」を低下させる原因には、喫煙、加齢、病気、肥満、ストレスなどがありますが、原因がわからないことも多いです。
精液検査項目である精子の数や運動率では「精子の質」を反映できていない可能性があります。精子DFI検査とはDNAにダメージがある精子の割合(DFI)および未熟な精子(HDS)の割合を調べる検査です。
DFIが高い場合では、受精率、胚発生率、妊娠率が低下したり、流産のリスクや子の異常の頻度が高くなったりすることが報告されています。これはARTに限らず、自然妊娠や人工授精も同じことがいえます。また、不妊に関わらず加齢に応じてDFIが増加することが知られています。
「精子の質」を調べることにより、今後の治療方針を検討する上で重要になるだけでなく、抗酸化サプリメント服用や生活習慣の改善の必要性の判断材料にもなります。

